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ちょっぴり恥ずかしい過去の話…

私は小学校のころ文章を書くのが人一倍苦手でした。
小学校3年生の読書感想文なんかは、本(確かうさぎが冒険するような話)は読んだけれど、何を書いたらよいかまったく分からなくて、泣きじゃくって母親に「代わりに書いてよ」と頼んだほどです。
結局、母親は書いてくれなかったんですが、本の後ろの「あとがき」に書いてある解説をそのまま移せばできるという誰でもできる必勝法?を思いついて、難を逃れました。


今思えば、それはかなり反則ですし、あの時は何でたった5ページの文章を書けなかったんだと悔しい思いもあります。
そんな感じで苦手意識が積み上がっていき、中学になっても国語などで記述式の問題が出ると震え上がっていました。
当然、国語の成績はいつも5段階評価で2~3です。
もちろん、本なんて読みません。
世の中で怖いのは「地震、雷、家事、読書」だと思っていました。
そんな文字アレルギーの私が「文章を書く」ということに興味を持ったのは大学に入ってからでした。
まあ、普通18歳にもなれば好きな人もできますよね。
私もその普通の男だったため、憧れる女性がいました。
何気ない会話をする程度の関係だったんですが、
密かに「なんとか彼女と付き合いたい」と思うようになっていました。
しかし、あろうことか彼女の趣味があのにっくき読書だったんです。
だから趣味の会話がまったくかみ合いません。
好きな本とか訊かれても何も答えられないんです。
なぜなら、まったく読んだことが無いからです!!
高校の面接で、「最近どんな本を読みました?」
と訊かれ、思わず「少年ジャンプ」と答えて失笑をかった経験がありましたが同じミスを犯すわけにはいけません。
「ああ、もう終わった。彼女と付き合うことはない」
そう思って諦めかけたんですが、あるひとつの考えが浮かびました。
それは、コペルニクス的転回とも言うべき方法だったんですが、
彼女に自分の書いた小説を読んでもらったら感動するんじゃないか」でした。
小説が好き=それを書いた人も好き」というヒラメキです。
思いついたはいいんですが、本もろくに読んだことのない人間が
小説を書こうだなんていうのは、カナヅチなのに泳いでドーバー海峡を渡ろうとするようなものです。
いざ原稿用紙を目の前に置いても、最初の書き出しすら書けません。
今思えば、いきなり書くんじゃなくてプロットを考えるのが先なんですが、その当時はそんなことも分かりません。
とにかく、プロの作家は原稿用紙を置いてすらすらペンを走らせるのだと思っていました。
悩んだ挙句、本屋にいって、『ベストセラー小説の書き方』ディーン=R=クーンツ著を買って読みました。
ベストセラーなどと、いきなりたいそうなタイトルのモノから入ってしまいました。
確かにタメにはなったんですが、具体的に書くにはどうしたらよいか良く分からなかった為、さらに大学の図書館で役立ちそうな本は全て読みあさりました。
不思議なんですが、それまで「一生本なんか読まない」くらいに思っていた私がいつのまにかスラスラ、苦も無く本を読んでいるんです。
その当時はそれすら疑問に思わないほどに、「小説を書きたいという思い」に突き動かされていました。
そんなこんなで、約半年をかけて原稿用紙50ページ程度の作品を完成させました。
半年で50ページ?
と思われるかもしれませんが、それでも当時の私にはかなり大変でした。
タイトルは「高価なお宝」です。
最高傑作(1作しか書いていないので当然です)ができたと思い、
ルンルン気分で彼女の元へ。
小説書いてみたんだけど…」と差し出すと、
えっ!」と一瞬驚いたが、すぐに読んでくれました。
その間は超ドキドキです。
おもしろいね」か「つまらないね
どちらの答えが返ってくるのか、前日から想定して、
返事ができるようにシミュレーションしていました。
しかーし、彼女が言ったのは、まったく予想だにしない言葉でした。
それは…。
次回へ続く….。
なんて、連載小説みたいなことはありません。
彼女が言ったのは、
なんか漫画みたいだねでした。
愕然としました。
面白いのか面白くないのかも分からないし、
褒められているのか、けなされているのかも分かりません。
いまだに分かりません。
その後、急にやる気を失い、しばらくは、まったく小説が書けなくなってしまいました。
もちろん、彼女と付き合うこともなく、淡く切ない思い出となっております。
とにもかくにも、私はこうして物書きの世界へ足を踏み入れたわけです。
この後どうやって漫画原作の世界に魅了されたかは、
また別な話で….。
P.S.
ちなみに彼女に見せた「高価なお宝」はこの数年後に、修正を加えてヤングジャンプの漫画原作賞に送ったら「奨励賞(10万円)」をいただけたのであながち彼女の「漫画みたい」という感想は間違っていなかったわけです…。

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